連立1次方程式

2022.9.13
Math

行列と連立1次方程式

\left\{ \begin{matrix} a_{11}x_1 + a_{12}x_2 + \cdots + a_{1n}x_n &=& b_1 \\ a_{21}x_1 + a_{22}x_2 + \cdots + a_{2n}x_n &=& b_2 \\ \vdots \\ a_{m1}x_1 + a_{m2}x_2 + \cdots + a_{mn}x_n &=& b_m \end{matrix} \right.

以上のような連立1次方程式は、行列を用いて

\begin{bmatrix} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} \end{bmatrix} \begin{bmatrix} x_1 \\ x_2 \\ \vdots \\ x_m \end{bmatrix} = \begin{bmatrix} b_1 \\ b_2 \\ \vdots \\ b_m \end{bmatrix}

と書き表すことができる。A = [a_{ij}], \bm x = [x_j], \bm b = [b_i]とおくと、以下のように書ける。

A \bm x = \bm b

Aを係数行列と呼ぶ。

拡大係数行列

A \bm x = \bm bにおいて、係数行列Aとベクトル\bm bを並べてできる行列

\begin{bmatrix} A \mid \bm b \end{bmatrix} = \left[\begin{array}{cccc|c} a_{11} & a_{12} & \cdots & a_{1n} & b_1 \\ a_{21} & a_{22} & \cdots & a_{2n} & b_2 \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots & \vdots \\ a_{m1} & a_{m2} & \cdots & a_{mn} & b_m \end{array}\right]

を拡大係数行列と呼ぶ。

行基本変形

  1. i
    行目と
    j
    行目を入れ替える (
    i \neq j
    )
  2. i
    行目を
    c
    倍する (
    c \neq 0
    )
  3. i
    行目に
    j
    行目の
    c
    倍を加える (
    i \neq j
    )

行階段型

主成分(行の最も左の0でない成分)が階段状に並んでいる行列を、行階段型と呼ぶ。以下は行階段型行列の一例である。

\begin{bmatrix} 1 & -4 & 0 & 2 \\ 0 & 0 & -1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 3 \end{bmatrix}

階段の段の個数を階数(ランク)と呼び、行列Aの階数を\rm rank\ Aと書く。

行簡約階段形

階段形であり、主成分が1であり、主成分の上下の成分が0である行列を、行簡約階段形と呼ぶ。

\begin{bmatrix} 1 & -4 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}

任意の行列は、行基本変形を行うことで行簡約階段形に変形できる。このアルゴリズムは、掃き出し法(ガウスの消去法)と呼ばれる。

行基本変形と連立1次方程式

連立1次方程式A \bm x = \bm bを考える。\begin{bmatrix}A \mid \bm b\end{bmatrix}に行基本変形を行い、\begin{bmatrix}B \mid \bm c\end{bmatrix}が得られたとする。このとき、A \bm x = \bm bB \bm x = \bm cと同値である。

行基本変形の解と自由度

連立1次方程式A \bm x = \bm bを考える。A(m, n)型行列である。A \bm x = \bm bが解をもつための必要十分条件は、

\rm rank\ A = \rm rank \begin{bmatrix}A \mid \bm b\end{bmatrix}

となることである。この等式が成り立つときの連立1次方程式の解の自由度(任意定数の個数)は

n - \rm rank\ A

である。

同次(斉次)連立1次方程式

連立1次方程式A \bm x = \bm bにおいて、\bm b = \bm 0であるとき、同次(斉次)であるという。そうでないとき、非同次(非斉次)であるという。

同次連立1時方程式は必ず\bm x = \bm 0を解にもち、これを自明な解と呼ぶ。\bm 0以外の解は非自明な解と呼ばれる。

A(m, n)型行列とする。同次連立1次方程式A \bm x = \bm 0について、以下が成り立つ。

  1. \rm rank\ A = n
    ならば、
    A \bm x = \bm 0
    は自明な解のみをもつ。
  2. \rm rank\ A < n
    ならば、
    A \bm x = \bm 0
    は非自明な解をもつ。