失われたインターネット

#45
2022.8.31

2022年の今日では、所謂ホームページと呼ばれていた、個人運営のパーソナルなウェブサイトがめっきり減ってしまったように感じられます。まあその代わりに、WordPressを使ったブログサイトがたくさん誕生したわけですが。でも、これらのブログサイトと、古のホームページたちには微妙だが大きな差があるのではないかと、私は思うのです。

私の印象として、昔のホームページというのは、商売としてではなく趣味で運営されているものが多かったと思うのです。ゆえに、かなり個人的な内容が多くて自己満足なサイトが少なくなかった印象です。と言っても、私は別に90年代のインターネットを味わったことがあるわけではないので、完全にイメージだけで語っているのですが。でも、昔はインターネットがマニアックなものであった分、商売をしている人は少なかったはずです。

今日のインターネットにも、確かにブログというものは存在しています。しかしそれらは、多くがアドセンスを目的としているように感じられてしまうのです。少なくとも私にとっては、ですが。

「おもしろさ」は何処へ

時が経つにつれて、インターネットは老若男女誰もが手にするものになりました。しかし、それが「おもしろい」結果をもたらしたか、と問われれば、本当にそうなのでしょうか。ある場所に人が増えれば増えるほど、その場所でビジネスをしようと考える人が増えるのは必然です。インターネット人口が増えるにつれて、ネットは現実とほとんど地続きとなり、ビジネスの場所に姿を変えました。もはや今日インターネットでビジネスをしている人間は数知れず、というくらい大きな市場に成長しました。

言っておくと、私はインターネットで金を儲けることを否定する気は全くありません。ですが私が危惧することは、それによってインターネットから「おもしろさ」が無くなってしまうことです。おもしろさ、と言ってもそれは主観的で曖昧なものです。ですから、これはあくまで私の主観でしかありません。でも、私はインターネットがそういう場所になるにつれて、つまらなくなってしまった、と感じることが少なくないのです。

なぜつまらなくなったか

インターネットがビジネスの場所と化することで、なぜつまらなくなってしまうのか。私がその原因の一つとして考えるのは、数字が価値を持つようになってしまったからです。ここで言う数字というのは、例えば、動画の再生数であるとかサイトの訪問数、ツイートのRT数などの数字です。今日のインターネットでは、他人よりも大きな数字を持つことが、儲けにつながるのです。これはほぼ全てのプラットフォーム(YouTube等)で言えることだと思います。

ではなぜそういった数字が儲けを生むと、インターネットがつまらなく感じられるのでしょう?それは、それらの数字を無意識に他人と比べてしまうからだと私は考えます。数字というのは、ある意味で非常にわかりやすいです。誰でも2つの数字の大きさを比較できますし、もっと言えば無意識的にそれを理解できてしまいます。だから面倒だと、私は思うのです。数字は決して、全てを語らないのにも関わらず、資本主義においては、大きな数字を持つ方が勝ちなのです。

しかし、インターネット上の数字というのは、明確な理由があってその値になることの方が少ないと私は考えます。バズっているツイートのRT数なんかが良い例です。その数字が如何にして得られたのかなんて考えても無駄でしょう。無数のファクターに左右された結果の数字なのですから。なのにも関わらず、数字は人々を惑わすのです。

なので私としては、そういった数字を見ても仕方がないと思ってしまうのですが、にも関わらず最近のプラットフォームでは数字を表示するのが当たり前になりつつあります。今日見られるそれらの数字というのは、古のホームページのアクセスカウンターとは、全く違う意味を持つ数字なのです。

失われた世界

残念ながら、のどかなインターネットというのは失われてしまいましたし、もうその頃に戻ることはあり得ません。儲けることができるプラットフォームがあるのにも関わらず、そこに行かないというのは、どう考えても貧乏くじなのです。よほど奇特な人でない限りは、わざわざその貧乏くじを引こうとは思わないでしょう。

ですが、それは既存のプラットフォームをさらに拡大させることに繋がり、最終的に得をするのは、そのプラットフォーム提供者であることは言うまでもありません。そしてそれは独占を私たち自らの手で加速させているようなものです。デジタルな資本社会に、私たちはいつの間にかどっぷりと浸かっているのです。

これからのインターネットとどう付き合うべきか

インターネットはある意味で、不自由なものになってしまったということは否めないでしょう。確かに、大きなプラットフォームを使うのを避けて、数字と無縁の環境を作ることは可能ではあります。しかし、インターネットを使っている以上、そういったプラットフォームを無視し続けることにも限度があります。全てのプラットフォームを使わないであるとか、インターネットをやめるだとかというのも、一応可能な選択肢ではありますが、現実的とは言えないでしょう。

私がお薦めしたいネットとの付き合い方は、極力使うプラットフォームを減らすことです。本当に必要だと思うプラットフォームだけに注力すると、精神的にも負担が少なくなりますし、時間を作ることにも繋がります。

今のインターネットは、一歩引いたところから見るくらいがちょうど良いのです。